新しい公益信託法で何が変わった?旧制度との違いと移行のポイント
2026年4月1日、「公益信託に関する法律」(令和6年法律第30号)が施行されました。大正時代の旧法から、約100年ぶりの抜本改正です。担い手は信託銀行以外にも広がり、託せる財産と活動の範囲も広がり、監督は許可制から内閣府による認可制に変わりました。この記事では、旧制度と何が違うのか、すでに存在する公益信託はどうなるのかを整理します。
旧制度の「3つの事実上の限定」が制度を小さくしていた
旧制度の公益信託は、法律の建て付けそのものよりも、運用上の制約で使いにくくなっていました。受託者は事実上信託銀行に限られ、託せる財産はほぼ金銭のみ、できることも助成金・奨学金の給付が中心でした。さらに、教育なら文部科学省、環境なら環境省というように事業分野ごとの主務官庁が許可・監督する縦割りの仕組みで、新しく作るハードルが高かったのです。
その結果、公益信託の件数はピーク時から長期的に減り続けていました。想いのある財産の受け皿として期待されながら、制度が時代に追いついていなかったのです。
新制度の変更点は4つに整理できる
1. 内閣府による認可制への一本化
主務官庁制が廃止され、公益法人と同じく内閣府の公益認定等委員会が関与する認可・監督制度になりました。認可の基準が法律に明記されたことで、透明性と予見可能性が高まっています。認可された公益信託は名称・受託者・公益事務などが公示され、誰でも確認できます。
2. 受託者の拡大
信託銀行だけでなく、NPO法人・一般社団法人・信託会社なども受託者になれるようになりました。地域のことをよく知る団体が、地域の財産を預かって地域のために使う。そんな形が制度上可能になっています。
3. 信託財産と公益事務の拡大
金銭に加えて、不動産や有価証券などの財産も託せるようになりました。活動も助成金の給付に限らず、幅広い公益事務が認められます。託せるものが変われば、できる支援も変わります。たとえば美術品を託して展示に活用するような構想も、制度の土俵に乗るようになりました。
4. 税制優遇の整備
認可を受けた公益信託は、公益財団法人と同水準の税制優遇の対象になります。旧制度では「認定特定公益信託」という別の認定を取る必要がありましたが、新制度では認可と税制が一体的に整理されました。個別の適用要件は国税庁の情報で確認してください。
すでにある公益信託は「移行認可」で新制度に移る
旧制度で設定された公益信託は、法律の附則に基づく移行認可を受けて新制度に移ります。2026年8月には、三菱UFJ信託銀行が受託する研究助成系の2つの信託(成茂神経科学研究助成基金・成茂動物科学振興基金)の移行認可が公示されました。約45年の歴史を持つ信託が新制度に引き継がれた例です。
旧制度の認定特定公益信託には認定の期限があるため、期限を迎えるタイミングで新制度へ乗り換える動きが今後も続くとみられます。移行・新規の認可情報は「公益法人information」でいつでも確認できます。
新制度らしい実例がすでに生まれている
2026年6月以降の認可事例には、新制度の特徴がよく表れています。
- NPO法人むすびえが受託者となった「地域まるごと『こども応援』公益信託」(信託銀行以外の受託の代表例)
- 信託会社ほがらか信託と事業会社コモンズジャパンが共同受託する地域共創「子供の未来・教育応援」公益信託(寄付を広く受け入れる設計)
- 一般社団法人二地域居住共創協会が受託する「公益信託共創体験移動支援基金」(学生の地域活動の交通費を支援)
担い手も、目的も、規模も広がり始めています。制度改正のねらいどおりの滑り出しです。
出典・一次情報(確認日:2026年8月28日)
本記事は2026年8月28日時点の公開情報に基づく一般的な解説です。認可の要件や税制の適用は個別の事情によって異なります。実行の前に、必ず一次情報と専門家にご確認ください。公益信託.comは株式会社KAKUKATAが運営する民間サービスであり、国・地方自治体の公式サイトではありません。
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